教えない 250209
2025/2/9
お金をもらうからには、いけばなを教えなければいけない。ところが過ぎたるは及ばざるがごとしで、教え過ぎると生徒は学ばなくなる。学ぼうとする機会や気持ちを摘み取ってしまうことにもなる。
野生動物の子どもは、人間に比べて何倍も速く大人になる。裏側では天敵に食い殺されたりして種全体の死亡率は高いが、たいていの動物は自己責任で学んで命を永らえる。危機に瀕するたびに注意力や観察力が自ずから育っていくわけで、危険な目に遭えば遭うほど経験は蓄積され、五感や直感も磨かれて、学ぶという才能が身に付く。
私が親に感謝していることは多い。まず、基本的に禁止を命じなかった。また、裏で監視していたことはあっても放置しているフリをしていた。だから、物心つくまで、私は自分自身の力で育ってきたと思い込んでいた。実際、自分が見つけたり編み出したりしたこともあるだろう。しかし、中年になってから思い返すと、両親や祖父母や学校の先生の無言の導きがあったことを痛感した。そして、両親が他界してから空っぽの実家に座っていると、ますますその思いが強くなった。