教養 250302
2025/3/3
武蔵野に散歩する人は、道に迷うことを苦にしてはならない。どの路でも足の向く方へゆけば必ずそこに見るべく、聞くべく、感ずべき獲物がある。国木田独歩の『武蔵野』の一文だ。
話をして楽しい人は、こんな気持ちで日々あちこちをあれこれふらついている人だ。どんな話題でも関連性のある経験があるか、本を読んだり知人から聞いたことがある。仮に全く経験がなくても、広い経験を生かして想像力で補完できる。だから、教養がある人には想定外という事態が起きない。また、どんな話題でも相手以上には深入りしない遠慮と、その話題について豊富な言葉を持ち合わせている。
いけばな作品について語るときも、その語り口は少ないよりは多い方がいい。ただし、実際に語るかどうかは別問題で、そのときその場の事情によって黙っていることを選択することもあるだろう。
さて、いけばなを語るために、いけばな以外の話題でもって遠回しにいけばなを語れる人もいる。いけばなをしたことがない教養人は、絵画や音楽の話を借りて遠回しにいけばなを大いに語り、私たちの教養を高めてくれるのだった。