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いけばな随想
diary

文明と文化 231103

2023/11/4

 文明という言葉は、高度成長期を少年で過ごした私にとって輝かしい響きがありました。青年になると、文化という言葉の方により魅力を覚えるようになりました。それが災いして、儲ける楽しさよりも使う楽しさを追い求めた私は、29歳まで借金漬けでした。
 少し成長して、「文化的な暮らし」は「文明的な暮らし」の上に成り立っていると理解した私は、残業につぐ残業でがむしゃらに働き、ひとまず文明的な暮らしを手に入れました。ところが、それにどっぷり浸かると、もっと儲けてやろうという欲求が強くなり、貧乏臭さからの脱却ばかりが人生目標になっていました。結局、合理性だとか利便性の奴隷と化し、若くして体を壊したのです。
 いま、退職して、利便性に流れないものをどれだけ抱えていられるかということを、自分に課し始めました。同時に、汎用性や大衆性の反対側で、どれだけ自分らしさを大事にできるか、いけばなをきっかけに問い直そうとしています。
 文明は生産の側、文化は消費の側で、対立関係ではあるけれど、どちらか一方だけでは人間らしい生活も創造もできません。

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