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いけばな随想
diary

有限の面白味 240807

2024/8/7

ビジネス上の受託なら尚更、いけばなは長く見積もっても数時間のうちに仕上げなくてはならない。仕上がったいけばなは永遠ではなく、極めて短い時間で作品としての体を成さなくなる。いけばなは、生まれてから死ぬまでカゲロウのごとき短い生涯なのだ。

1枚の絵を描く場合は、時間のことをあまり気にしなくてもよい。1年間かけて描くことも珍しくない。そして、ずっとずっと手を加え続けることもできる。もちろん、描き終えた絵のことをそれっきり忘れても絵は残ってくれる。

いけばなは、そうはいかない。いけたことを忘れて放置してしまうと、カビが生えたり水が腐ったりするので、生み出した人の手で作品の看取りをしてやることが大切なのだ。したがって、いけばなの制作期間というのは、花材の準備を始めた時から花材を処分するまで、プロセスの全体を指すことになる。

花材の体調やご機嫌を伺いながらあれこれと世話を焼くのが、いけばなにおける制作期間なのである。仮にいけばなが無限であったら、全く面白味もないだろう。命の儚い人間と出会い、刹那的に花開く芸術がいけばなだ。

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