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いけばな随想
diary

朝の花、夜の花 240207

2024/2/9

朝の花は、愛らしく屈託のない庶民だ。そして夜の花は、シナを作る個性的な舞台俳優だ。

朝は、花を大きく包み込むように光が取り巻く。太陽光が満ちていると、照明光は無力に等しい。姿態や表情、肌合いまでもあからさまに照らし出されると、人は自らを演じることを諦めざるを得ない。花も同様だ。影は濃くても、陰を纏うことはできない。

夜は、部屋の中では月の光も届かない。空間は暗転した舞台と化す。ホリゾントの照明がほのかに夜を感じさせたりするところで、不意に細いスポットライトが当てられると、俳優である花は、キメのポーズで観客にアピールするのだ。

私は退職してから、朝のいけばな教室も始めた。そして、夜の教室と比べて、自分の気分も生徒さんの作品もまるで違ったものになることをつくづく感じている。午後の教室も始めたので、それはそれでまた違った体験が得られている。草月では、花を「場にいける」と言う。だから、朝は朝の良さを生かし、夜は夜の良さを生かす。

いずれにしても、太陽光が少ない状況での照明光が果たす役割の大きさに、今更ながら驚いている次第。

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