未来にあるもの 231218
2023/12/18
いけばなは、「そこにあるもの」だけがあるのではない。
いけた本人が「背景の山を借景している」ということであれば、そのいけばな作品の大きさは空間的には直径5kmにだってなり得る。いけばなの空間にはドローイングの絵のような額縁がないから、「そこにないもの(遠い景色)」も、作品の一部として持ってくることができるのだ。
いけばなは、時間的にも表現を拡げていくことができる。
いけばなで使う植物は、人の感覚で感じ取れるくらい速い速度で生長し枯れていくため、私たちが普段使っている意味での「現在」と呼ぶ時間に、もう少し前の過去ともう少し後の未来を含んでいる。実際にも、1本の枝の下の方の花が散り始めている丁度その時に、枝先の方の蕾が膨らみ始めていたりする。つまり、過去に存在していた種子や蕾の面影を残しつつ、未来に存在する枯葉や新しい種子を予感させているのが植物だ。
そんな植物をおもな材料とするいけばなは、やはり「いま」の範疇が広くて、「過去」や「未来」と断絶することなく、「現在」において「未来」を先取りしながら表現できる様式なのだ。