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いけばな随想
diary

材料依存のいけばな 250206

2025/2/6

 日本料理の板前の仕事は、素材の良さを引き出し、素材の良さを生かすことである。伝統的な献立はもちろん、現代でも日本由来の食材を使わないことには始まらない。これは、高低差のある狭い国土では山海の多様な食材が新鮮なまま手に入ることによって、濃い味付けや加熱で食材をこねくり回さなくても美味しく食べられたことが大きい。
 局所的には、保存の必要性などから干したり醗酵させたりということも行われたが、それらにしたところで味を加えたり加工度を高める方向には行かなかった。
 この取り組み方は、いけばなにも当てはまる。日本には山も森も林も野も川べりも海岸もあって、この狭い範囲での多様性によってたくさんの木や花がいつも必ず身近に生育している。だから日本人は誰もがいつでも木と花を取り合わせていけばなを始めた。花木の魅力を掛け合わせて、客人を招く空間を“美味しく”演出した。
 ところがいま、近隣の花木を近所の花屋から買うことができなくなりつつある。山で竹を切る人がいなくなり、露地やハウスで木を育てる人がいなくなってきた。早晩いけばなは滅びるか?

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