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いけばな随想
diary

水に流す 231204

2023/12/5

 日本の昔の家屋は木と紙だったから、比較的簡単に壊して更地にできた。建物だけではない。政治家が良くないことをやらかしても、心機一転、禊ぎを済ませたらすぐに「真新しく」返り咲ける。日本人は、不都合も何も「水に流す」ことが得意だ。
 ヨーロッパに約40年暮らす友人が、「ロンドンのアパートは古ければ古いほど家賃が高かったりしてさ」と、悲しいような自慢するような口ぶりで言う。「200年大丈夫だった建物なら、あと200年は安心な物件だ」というのが、石の建造物に対する彼らの感覚で、日本人の「もう50年経ったから、そろそろ危ないかも」という感性とは正反対らしい。
 一度ロンドンで、古書店街へ行った。1880年代発行の帆船図鑑や植物図鑑をバラしてページ1枚1枚に手彩色したものを、子供のクリスマス・プレゼントに購入している親が何人もいて驚いた。
 いけばなは、とにかく、いけた先から枯れ始める。作品を長く取っておけないので、自分の作品に対する執着もあまりない。気に入らないいけばなを今日しても、水に流して明日からまたやっていけるのがいい。

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