汀州Japanlogo 汀州Japanlogo

いけばな随想
diary

白雲 231115

2023/11/15

 草月流の初代家元=勅使河原蒼風先生の書に、『白雲』がある。直筆の色紙を仲間がネットオークションで落札して、以前プレゼントしてくれた。改めて、お礼を申し上げたい。
 夏目漱石の『草枕(ワイド版 岩波文庫)』の巻末解説中に、(ある便りに)「夏は閑静で綺麗な田舎へ行って御馳走をたべて白雲を見て本をよんでいたい」という(漱石の)想いがしたためられていたことが記されている。
 このときの漱石の白雲と、蒼風先生の白雲とは、私の印象では全く対照的だ。片方は、世間の利害関係や喧騒からできるだけ遠く距離を置いた穏やかな白雲。もう一方は、社会の有象無象にまみれながら、そこに大空を押し広げて自らが湧き立たせる力強い白雲。
 私は、今春退職するにあたって、漱石の白雲を眺めたい心地だった。いまも、どちらかというとそうだ。しかし、少しだけ、蒼風先生の白雲にあやかりたい気持ちもある。遠い白雲を追い求めて一度どこかへ行ってしまうと、もう二度と日常の愛すべき混乱に戻って来られないかもしれない不安がぬぐい切れないからだ。
 ……かといって、面倒も嫌だけれど。

講師紹介