汀州Japanlogo 汀州Japanlogo

いけばな随想
diary

空即是色 231223

2023/12/23

 歳を取ると人間が丸くなるというのは、私には当てはまらなかった。むしろ、怒りっぽくなったくらいだ。
 色めき立つという言葉がある。何かに対して、過度に緊張を感じたり興奮したりするもので、怒りに震える局面などでは顔色が赤く(または青く)変わる。
 私は、子供の時に心底怒った記憶がない。物忘れが酷いのではなく、感覚アンテナの感度が低くて、何を見ても聞いても受け取り方が虚ろだったのではないかと訝しい。感覚が動かなければ、心は空のままである。心が空っぽだったから、本来であれば賛否が分かれる物事も、一旦受容できていたのかもしれない。今やっと、歳を重ねて五感が鍛えられ、人の話を聞いて賛同したり反発したりできるくらいに成長したのだろう。
 もし、私の心がいっぱいだったら、仮に他人の言動に反応しても、その気持ちを収める隙間がなかっただろう。満たされた甕に、それ以上水を足すことはできない。満即是無であり、満即是空でもある。
 まあ、空っぽだった私という甕に、喜怒哀楽の水が半分くらい満たされて、とりわけ怒の割合が大きいという状態であろうか。

講師紹介