汀州Japanlogo 汀州Japanlogo

いけばな随想
diary

空漠とした平原 250112

2025/1/12

 行ったこともないモンゴル平原は、小学生の私の憧れの地だった。知らない土地が憧れとなった理由は、不思議なことに何度も空想のモンゴルを夢で体験していたからだ。草原と風と砂漠しかしかない空想のモンゴルは、後に写真や映像で見ることになる現実のモンゴルそのものだったので、私は密かに自分はモンゴル人の生まれ変わりだと思ったりもした。
 迷宮のような風景に魅力を感じる私は、それとは反対にモンゴルの空漠とした風景も好きだ。迷宮の方は差し招かれるままに行ってみたいのに対して、平原の方は大変そうだし絶対行きたくないのに磁石に後ろ髪を引かれるようで忘れられない。
 もし、迷宮のようないけばなをいけることができたら、次は空漠としたいけばなの出番だと思っている。どちらが先になるかはわからないが。
 迷宮作品は光と影が複雑に入り組んでいて、草原作品は無口でポツンとひとり、影も作らずに佇んでいる、そんな感じになるだろう。これは言葉では言えても、実際には永遠に辿り着けない制作イメージなのかもしれない。いずれにしても、観念的で造形的ないけばなの方法だ。

講師紹介