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いけばな随想
diary

空走り(からばしり) 240420

2024/5/5

 今回のいけばな展の出品で、強く心に刻まれたことがある。一緒に合作した先輩の先生が、徹底して準備に気を配られたことだ。
 結果的には用意した花材が余ったが、もちろん足りなかった場合には目を覆う悲劇的シーンが待っていた。余分だろうと分かりながら、それでも多めに準備した。また、使った鉄花器は黒い塗装仕上げだったが、先輩は事前に3度も塗り直して万全を期した。私は1回目にお手伝いしたとき、それでもう十分だと安心しきっていたのに。
 そうだ、私は小中学校でサッカーをしていた。長距離走が得意で、いくら走っても疲れなかった。当時は何の考えもなかったけれど、大人になってから「空走り」の大切さを意識している。「空走り」は、低い確率ながら来るかもしれないチャンスをモノにするため、ムダとも思える走りを繰り返すことである。たまたま気を抜いて走っていなかったときに限って、惜しいチャンスが回ってくるものだということは、少年ながらに直覚していた。
 大人になって、合理的で効率的な行動が求められることが多い。人事評価が下がっても、「空走り」は面白い。

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