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いけばな随想
diary

花の主役 240505

2024/5/10

草月の花型(かけい)は、3本の「主枝(しゅし)」と数に規定のない「従枝」とで構成される。そして3本の主枝は、「真・副(そえ)・控(ひかえ)」の役割を分担する。

呼称からすれば、真が主役であるはずだが、そうとも言い切れないのが面白いところだ。なぜなら、作品を正面から見る人の目線にまっすぐ向いているのは、3本のどの主枝でもなく、従枝の花の1本だからである。人の目は、褐色の枝葉よりも、鮮やかな花の方を見染めてしまうようだ。

映画であれば、カメラが主役を主役らしく見せるように追いかけるので、観客は安心してカメラワークを追っていれば済む。しかし、舞台であればそうはいかない。観客自身が自分の感覚と判断で、舞台上の人物を選択しクローズアップしなければならない。いけばなも同じだ。

さて、主演を担うのが従枝の花だとするとき、3本の主枝が果たしているのは、舞台空間の創出であろうか。そして、その空間そのものが人目を魅了することもある。美術館等で、展示された美術品以上に建物がクローズアップされることの多い安藤忠雄の建築がそれに当たる。

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