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いけばな随想
diary

花の質感 240504

2024/5/9

私は、工場跡地の乾いた地面などにポツリポツリと咲き揺れるヒナゲシが好きだ。茎が細長く、見かけが弱々しい。大小の小石が転がる地面のざらついた殺風景さと、触るとフッと儚く散ってしまいそうな弱々しさの対比的な風景が、特に夕方の逆光では触れてはいけないあの世との境のようにも感じられる。

 重信川中流域のゴロ石の河原の所々に揺れるオオキンケイギクの草原も、ゴツゴツした河川敷の感じと、寂しげなバラツキで揺れる細長い茎の対比が寂しげでいい感じだ。

 絵画でも、不透明絵具を塗り重ねた重厚感のある油絵よりも、透明絵具を掃いたように淡く塗った水彩画の儚さの方が好きだ。絵具の塗り方による質感の違いがあるように、いけばなにもツヤツヤした椿の葉、ギシギシしたニシキギの枝というふうに、花材に由来する風合いがある。

花材は、絵具のようにはそれぞれの個性を殺して混ぜ合わせることはできない。花材自体が個々に魅力を持っているので、それを殺さないよう全体を構成したい。2つ以上の花材を組み合わせて、総体としてまとまった風合いのいけばなができた時が嬉しい。

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