花材の優劣 250324
2025/3/27
絵描きが使う絵具の色は多い。さらに絵具と絵具を混ぜて無限の色を紡ぎ出す。赤の方が青よりも好きだという好みが彼にあったとしても、赤は7点で青は4点という価値の優劣はつけない。黄も紫も白も、彼にはあらゆる色が必要だからである。
私も花の好みはある。好き嫌いを言うならば、寂しげに揺れるポピーや夏の終わりを感じさせる曇天の河原のコスモスなどはとても心惹かれる。しかし、いけばな花材としてはアセビやナツハゼなどの枝ものが好きだ。
いけばなでは目の前の「この花」を使うことができても、「この花」と「その花」とを混ぜ合わせて新しい「あんな花」はつくり出せない。入手した花材たちの色を点描のように置くことしかできない(ガラス容器に花びらだけを何千枚も入れて押し潰した、前衛的な作品をつくる人もいるにはいるが)。
そのように絵具に比べて制約はあるにしても、いけばなの花材も使い方次第で無限のバリエーションをつくれる。そのとき、たとえばタンポポは難易度の高い花材だが、だからダメだということはないし、ネジバナのようなのは貧相だということもない。