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いけばな随想
diary

花材の平等 240209

2024/2/9

小学校の時、社会科の教科書に「発展」「成長」の言葉が見つかるたびに、違和感を覚えていた私。誰かが「得した」と言っているのを聞くたびに、どこかの誰かが損をしていることを想像していた私。

そんな違和感は消えることなく、大人になってからは、政治経済の不平等に対してもっと敏感になった。マネーゲームに対する嫌悪感と興味が入り交じり、マイナス残高が記帳された銀行通帳を眺めて悶える若い日々もあった。

私は悪人として大成功するタマではないので、それなら善人でありたいと思う。人の気質は人格と密接な関係だろうし、他人を優劣で評価して見下すようなマネを、花材に対してもしたくないと思う。

稽古の花材を自分で1本1本選ぶとき、生徒さんに対してこの枝の広がりはどうか? というような適性の視点で選んでいる。時々は花の種類だけ注文して、あとは花屋さん任せのときもある。そんなとき、枝ぶりや花の付きが悪いとかいうことは、一切言わないよう心掛けている。

むしろ、花はどれも個性的で可愛げがある。「発展」「成長」とは無縁の世界で暮らせるひとときである。

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