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いけばな随想
diary

華道の逆襲 240322

2024/3/26

 愛媛大学理学部のO教授と親しくさせていただいた時期がある。携帯電話はまだ普及していない。初めて研究室に訪ねた日、「干潮のときは大学にいないから」と、潮見表をくれた。研究対象は潮間帯の生物で、彼は膝までの長靴を履き、河口で真水と塩水が混じる汽水域の砂地を歩き回って掘り起こし、生物個体数を調べていた。そんな、環境の境界域に、生物個体数はとても多いらしい。
 海と陸の境界は、満潮になれば海に征服され、干潮になれば陸に征服されて、常に変動している。山と里山では、熊と人の領地争いが起こっている。元々は森を開墾して、人が住み着いてきた。しかし、家々が廃屋になる頃、伸び放題に伸びた植物が屋根まで征服し、油断すると里はすぐに森に戻る。
 さて、社会学的に見て、国境紛争地域は人的にも兵器的にもエネルギー消費量が非常に高い。「いけばな」と生活とは一体的でも、「華道」と生活との間には境界がある。境界には軋轢が生じる。軋轢は摩擦熱のエネルギーを生む。
「華道」で生活を開墾しよう。エネルギーを生み出すために、掘って掘って熱くしてやろうか。

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