複雑なシンプルさ 240808
2024/8/9
毛糸球をイメージする。規則正しく巻かれて、商品ヅラした白い毛糸球である。オブジェとしてあまり面白くない。その球をすべてほどいて1本の毛糸に戻し、それをランダムに、できるだけ複雑に絡み合った状態に巻き取っていく。最初の規則正しい毛糸球から、歪んでちょっと存在感のある毛糸球に変身した。同じ毛糸球なのに、存在の次元が変わった! と思う。
白い毛糸だけでなく赤や青や黄の毛糸を混ぜ込んで巻き上げると、もっと複雑に絡んだ球を作ることができる。毛糸の太さを変えて、更に込み合ったオブジェにつくり変えられる。それでも出来上がりは、シンプルに1個の球だ。
いけばなも似ているかもしれない。1本の椿の立木の枝を数本切らせてもらう。ヒマワリを3本用意し、椿と組み合わせて、いける。切り花の1本1本は、自然に生えていたときの椿やヒマワリのように複雑ではない。標準化されたそれらの花材で、1つのまとまりを構成する。
自然に生えていたときよりも複雑性が増したに違いないが、「型」という方法によって、その複雑さを感じさせない景色が出来上がるのだ。