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いけばな随想
diary

触感的いけばな 231031

2023/10/31

 日常生活では、五感のうちで視覚が優先しがちです。そんな中、様々な表現活動の中で、いけばなは比較的、触覚の関わりが大きいと思うのです。
 目で見たものは、大体「わかった」ような気になりますが、触ったり嗅いだりしたものは、「そんな感じ」がする程度で、明確にわかったとは言い切れないものがあります。いけばなでは、「そんな感じ」という微妙なフィーリングが大事です。
 日本には四季があることから、日本人は季節感の微妙な違いを細かく感じ分けられるといいます。これは、視覚的な季節ごとの風景の違いに加えて、肌で感じる湿気の重さや気温の上がり具合、風の優しさや流れてくる桜の香りが鼻先で儚く消える感じなど、様々な変化を肌感覚のとても優れたセンサーで感知しているのだと思います。
 いけばなは、この日本人の肌感覚が凝縮されたものだと思います。私は俳句はしませんが、俳人が吟行を好んでするのは、やはり肌感覚で世界を捉え切らないと言葉にならないのではないかと想像します。いけばなは、草花や木を媒介にして、もっと何かを触感的に掴み取ろうとしています。

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