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いけばな随想
diary

辺境四国 240323

2024/3/26

 境界はどこにでもある。最も明確なのは地図上の境界。しかし、現地に行くとどこにも境界線が描かれていないから、本当は境界はないのかもしれない。
 ずっと以前、私が愛媛県の端っこに憧れをもって走り回っていた頃のこと。銅山川沿いの道で、私は急ブレーキを踏んだ。10数m先の1.5mくらいの高さの擁壁の上の茂みから、得体の知れない大きな塊が飛び降りてきたのだ。その場所は木々が生い茂った正真正銘の茂みである。すぐにその物体が人間であることはわかったものの、想定外の出来事に呆然としてしまった。
 彼は両肩から“どうらん”を下げ、大きなリュックを背負い、いわゆる探検隊員の恰好だった。恐る恐る声を掛けると、奈良県の大和生物という会社の社長で、役所から受託して、1ヶ月はテント暮らしをしながら四国山地の奥深く入り込み、動物の生息状況を調査しているのだという。私のことは気もそぞろに、路上の糞が気がかりなようで、彼は不意にその糞に人指し指を立て、「ううん、まだ新しい。ハクビシンです!」と、嬉しそうな顔をするのだった。
 四国は素敵な辺境だ(喜)。

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