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いけばな随想
diary

通訳 240311

2024/3/18

 通訳の仕事は大変だ。真剣に取り組む人にとって仕事は何でも大変だ。とはいえ、通訳は最も大変な仕事の1つだ。
 それは、仕事の専門性を突き詰めるだけでは不十分だからである。異なる言語の間に入って、両者の意思疎通を実現させるというところは専門性に関わる部分だ。故人となってしまった私の友人は、かつて原子力発電所で同時通訳の仕事をした際に、来る日も来る日も原子力や発電、資源やエネルギー、地球環境や立地市町村への交付金など、ありとあらゆる周辺知識の勉強に励んでいた。何しろ専門用語が多過ぎて、日本人なのに日本語で書かれている資料の意味がわからないのだとこぼしていた。
 私が店舗にいけている花を、店と客をつなぐ媒体として捉えるとき、媒体は通訳ではないけれども、両者の関係をよりよく結びつける役割を担っていると思うし、そう考えて花をいけている。店の業種や業態、店主の人物、主な客層、店主が大事にしたい客層、店主の趣味、客が大事にしている店のグレード感や好み等々、本来であればそれを十分に理解することが求められる。
 いけばなも大変なのだった。

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