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いけばな随想
diary

重力の風景 250113

2025/1/13

 高度1万メートルの飛行機から見下ろすと、青い洋上に浮かぶ島が黒い点に見える。目に入る対象への距離が遠くて空間が大き過ぎるから、あまり重力を感じない。
 ところが、飛行機が陸地の上を飛ぶときには、高度が同じでも海と違って景色に凹凸が多く目測の対象が増えるせいか重力を感じる。電車やバスなど地上の交通機関に乗ったときには、目に映る景色は完全に重力に支配されている。乗り物が止まって景色も静止画になると、風景にかかる重力はぐっと重くなる。
 さて、いけばなは、重力場で制作する。生花を使うとき、どうしても花器に水を入れなければならず、それがこぼれないようにしなくてはならない。重力に反した花をいけようとすると、水の問題をまず解決する必要があるのだ。
 水の次は花材である。枝や茎を重力に逆らって剣山に立てたり花瓶に立てたりして、好みの角度に保たなくてはならない。直立させるのが最も安定した姿勢である。角度をつけて寝かせれば寝かせるほど、重力の影響をもろに受ける。体操選手のように、重力に逆らったり耐えたりする姿勢に、人の目は釘付けになる。

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