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いけばな随想
diary

雪月花 241001

2024/10/2

四角く長く黒い一輪挿しの胴の3面に、それぞれ雪・月・花の1文字が白く浮き出ている。古いものであることは間違いなく、父の時代のものか祖父の時代のものかどちらかだ。

季節ごとの風情や、気候に表れる特徴や、身近な自然の姿に対して、私たち日本人は昔から変わらず心を寄せてきたといわれる。そういう対象を象徴するのが雪月花だ。これらには、手応えという確固たる存在感はない。何しろ象徴なのだから、実体を伴っているかどうかは初めから問題としていない。

私は、いけばなで“気配”をいけたいと思っていて、でもそれはおそらく自分にしかわからないいけばなだ。他人に受け入れられるためには、少なからず手応えを感じてもらえる主張を伴わなくてはならない。

気配というのは、それそのものだけでは表せない。周辺の物事との関係としてどれが主役なのかわからないという場合に、気配が本領を発揮する。だから、写真を撮って、これが表現したかった気配だというふうに画角を決め込むのが難しい。気配を撮影するときの難関がピント合わせで、どこにもピントを合わせてはいけないのだ。

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