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いけばな随想
diary

15度の意味 250505

2025/5/5

 草月流の「立真型」は、最も主となる枝=「真」を垂直から15度、左右どちらかに傾け、そして前傾姿勢を取らせる。決して直立させないのがミソだ。もちろん人の数だけ感じ方や表し方があるので、分かりやすく15度と言い切ることは単純化を招く恐れがある。テキストに15度の理由が書かれていないのは、きっとそれが奥義の1つだからである。
 直立は静かなる「止」の姿勢だ。生きているのかどうかわからない。彫像でさえ、その静止した姿の中に動きを宿している。15度傾いて前傾した姿勢は、ギリギリ立っていられるかもしれないし、もう立っていられないという際どい立ち姿だ。つまり「立真型」は、主役の枝が今にも動きだしそうな緊張を孕んだ、アクションの前触れなのである。
 草月には45度傾けた「傾真型」や水平に張り出した「平真型」、垂れ下がった「垂真型」もある。「傾真型」は体操選手やスケーターのように「動」を感じさせる。その動きがいけばなの空間を広げ、大きくて深い呼吸を呼び寄せる。「平真型」は水平線までの遠い旅路を暗示し、「垂真型」は慎み深さを表現する。

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