汀州Japanlogo 汀州Japanlogo

いけばな随想
diary

「場」とは何か 251104

2025/11/4

 読んでいた本に、次の一節があった。「環境に対しては『気をくばる』、他のひとびとに対しては『気をつかう』、そして自己自身については『気にする』というのが、現存在のありかたである……『投げられて、投げかける』この二つの契機は、キルケゴール流にいえば、必然性と可能性の二つの契機に該当するであろう。」(松浪信三郎著『実存主義』)
 なんだ、草月が言うところの「場」とは、そういうことだったかと合点がいった。場に影響を受けながら場に働きかけるということを、息をするように吸ったり吐いたりしながら、花と共に一定の時間を過ごす。これが「場にいける」ということだったのである。
 いけられた花は、その瞬間に環境の一部となる。当然ながら、変化した環境に対して、他のひとびとからの批判(わずかな肯定的な反応も含めて)が起こる。環境を変えた者であるからには、その責任を負う誠実な態度が必要で、いちいち反論していても始まらない(終わりもしない)。自分を正当化したければ、ひとり自宅に飾るべきである。
 そういう意味で、「場」とは人間的な成長の現場である。

講師紹介