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いけばな随想
diary

いけばなの場 240512

2024/5/13

昨日の茶席にいけられていた芍薬は、直立したその1輪が、部屋の中で最も鮮やかな色彩を放っていた。綺麗だった。ところが、私には物足りなかった。それは、私がいつも花ばかり気にしてしまうせいであって、場を設けた人の部屋全体のしつらえとしては完璧かもしれなかった。

二之丸庭園のその茶室の後背は、城山の緑が萌えたっていて、確かに「山滴って」薫風が立ちこめていた。茶室に重いいけばながあると鬱陶しいかもしれなかった。

掛け軸について、茶会の主はこういう趣旨のことを言った。勝海舟は書家ではなく、むしろ政治家であった人なので、必ずしもこの書が素晴らしいと誰もが賛辞を贈るものではないかもしれないが、勢いがあって「山滴る」というテーマにはふさわしかろうかと思ったと。

もし私がその茶席に芍薬をいけるとしたら……。「いけばなは場にいける」というが、その場をつくり上げたコーディネーター(主人)の意図を解す必要がある。あらゆる催事では、できあがったその場は大事だが、主催者と客人の期待や好みを推測しなければならない。場とはそういうものだと思った。

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