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いけばな随想
diary

アレを超えたい 240724

2024/7/26

24年前の秋の初めだった。落葉を敷き詰めた地面の一部が、ペロリと剝けている。落葉をたっぷり載せた「地面の表皮」が、畳より一回り小さい大きさで長方形にめくれているのだ。巨人がカッターナイフで地面にコの字型に切れ込みを入れ、注意深く端っこをつまみ上げたような光景だった。その作品の花材はというと、上に反らせた鉄板と落葉と地面である。

私を驚かせたいちばんの理由は、地面を作品に取り込むことによって、どこまでが作品でどこからが風景なのか境界がなかったことである。空の上の人工衛星から地面のめくれた部分を眺めると、地球全体が作品だったのか! と判明するだろう。

そのショッキングな“地面ペロリ作品”は、草月いけばな展への賛助出品として、愛媛大学教育学部の美術専攻学生たちが取り組んだものだと聞いた。いけばなではないようにも見えるし、いけばなのようでもあるその作品が、私を刺激して草月の門をくぐらせたのだ。

それ以降、草月代々の家元の作品をはじめ、私を引き付ける作品に何度も出会ってきたが、やはり最初の出会いの強烈な印象は忘れられない。

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