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いけばな随想
diary

質感の好き嫌い 240611

2024/6/12

ヤン・ガルバレクという演奏者がいる。香り高くコクのある蜂蜜のように伸びるソプラノ・サックスの音を出す。ガトー・バルビエリという演奏者がいる。鍋底の割れた隙間から砂漠の風と一緒に吹き出すようなテナー・サックスの音だ。彼らが演奏する曲はもちろん好きだが、その前に音そのものの好みがある。

絵に関しても似ていて、写真でしか見たことがなかった絵をあるとき実物で見る。小さな写真では筆使いの微妙さを捉え切れなかったが、実物には好きな筆使いのタッチが表れていて、一段と好きになったりする。画面の質感が好みでない場合、その作品をなかなか好きになれない。

食べ物も似ていて、寄せ鍋ひとつ取り上げても各家庭の味がある。出汁の味もさることながら、白ネギや人参の切り方や大きさ、鶏肉の大きさや硬さ、出汁と具材の割合だったりの違いで、大いに口当たりが異なるわけだ。

いけばなの場合は、花木自身がその質感をまとっているから、いける人が花材個々の質感に手を下すわけにはいかないが、やはり組み合わせの分量や空間の取り方などで、作品の肌合いは大いに変わる。

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