伝統的な文化 241017
2024/10/19
いけばなの歴史は室町時代に遡る。600年の歴史ともなると押しも押されもせぬ伝統である。ただ、伝統という言葉には固定化された印象が付きまとうので、伝統文化と聞いて形骸化したつまらなさを感じる人もいるだろう。
しかし、1人の人間が生まれ、成長過程で身長も人格も変えていくように、いけばなも室町時代に生まれてから幾多の時代を経るうちに、その実態はどんどん変化してきたはずである。現代のいけばなが600年前とは全く違った見かけと中身を持っていても不思議ではない。
ところで、文化というのは、狭いジャンルのみで独立して成立できるようなものではない。いけばなを取り巻く様々な要素との関係性の中に文化が生まれる。建物、部屋の間取りやしつらい、衣服や花器の種類、入手できる花木の種類や量、気候や夜間の照明……、挙げればきりがない要素と共にいけばながある。
こんなに周辺の要素が変化しておきながら、いけばなだけが伝統的であると言い切るのは不自然だ。伝統的であると言うならば、変わっていないものが何なのか、いま一度問い直してみることも必要である。