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いけばな随想
diary

侘び寂びから遠く離れて 241125

2024/11/25

 どうも自信がない。これはSNSの影響が大きい。侘びとか寂びというのは喧噪より閑寂を求めるものなのに、強さや派手さや明快さをアピールしなければ認知されにくい。深淵または至高を目指す者が、白昼に衆目のもと短時間で何を伝えられるというのか。
 明るさがあって暗さが際立つことは分かっている。だから、侘び寂びも対照的に絢爛豪華な環境があってこそ成立する感覚であることも理解できる。しかし、暗さを明るさで表現することが難しいように、侘び寂びを派手さや豪華さで説明することも難しい。
 いけばなは究極のところ引き算であると思っている。渋谷のスクランブル交差点のような、人を足し算して群衆が慌ただしく行き交う密度を嫌う。仮に、群衆の引き算ができない場合は、人間をもっと身動きできないほどに詰め込んで、隙間や空気を引き算する。つまり、人間を足し算しているときでも、空気の引き算の方に着目するのがいけばなの流儀である。
 人生においても、幼少期は0歳からの足し算で、高齢になると、80歳引く64歳は、あと16年の命だ、というふうに引き算で数え始める。

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