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いけばな随想
diary

時間の表現 240809

2024/8/10

いける時には、その瞬間の枝や茎の手触りがあって、花の開き具合も見たままである。花の茎を傾けていけた場合、翌日には花の重さで曲がり方が大きくなっているかもしれないし、花も思いのほか開いているかもしれない。

いけばなには時間が作用する。手で確かめることのできない明日、明後日の花をいけるためには、今日の手触りから予想するしかない。

だから、いけばなで表現されるものは、空間的なだけでなく時間も合わせた世界観である。いける人の想像力の働かせ方によって、作品が小さくても、大きい世界観を表現することも可能だ。(大袈裟ながら)いける人の「宇宙」が創造される。

私は蓋付きの空虚な箱が好きだ。中に何も入っていないから、何でも入れることができる。空虚な空間に、何かが生まれ出そうな予感も常にある。そこに生まれ出る何かが、時間と共に重力場として収斂していくタイプのいけばなか、生まれ出た何かが、時間と共に外へ泳ぎ出て拡張していくタイプのいけばなを私は好んでイメージしていて、どちらにしても、隠し持った何かを隠しつつ表現したいと思っている。

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