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いけばな随想
diary

花の時間 241228

2024/12/28

 ある流派のある方が、「いけばなの一瓶に、過去・現在・未来をあしらうのです」と教えてくれた。そういう構想での取組を意識したことがなかったので、とても新鮮な気分がして面白いと思った。
 具体的には、1枚の虫食いの枯れかけた葉を挿したり実ものをあしらって過去を表現し、まだ堅く締まった蕾をいけて未来を感じさせたりする。
 私が草月の諸先輩から習ったのは「枯れても花は美しい」ことで、人間が綺麗な歳の取り方をするのと同様に、花の一生にも各段階の美しさが宿っているというものである。だから、私がいける一瓶の花は、切り取った一定の時間の範囲で異なる花材が過去・現在・未来を表しているのとは違って、花器の中の花たちが時間をかけてそれぞれの一生を過ごしているというイメージだ。言い換えれば、そのいけばなはには「完成の瞬間」はなく、絶え間なく変化し続けて過去・現在・未来を過ごしていく。それが生長であろうと老化であろうと。
 変化することが生きている証であり、いけばなは絵画や彫刻のように時間を凝固させて完成させる表現よりも、音楽や舞台の表現に近い。

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