汀州Japanlogo 汀州Japanlogo

いけばな随想
diary

花の記憶 250731

2025/8/1

 たいていの美術品や工芸品は、美術館や博物館に収蔵できる。しかし、いけばなはできない。それで1つ、思うことがある。いけばな作品には、タイトルの付いていないことが多い。名前もなく、美術館にも収蔵されないとなると、人々の記憶に残すためにはその現場での強い印象が必要だろうと。
 しかしである。いけばな展へ出向いて、私の記憶にしばらく残る作品は2つか3つしかない。記憶力が弱ってきたことも、自分と自分以外のものに対する興味が薄れてきたことも大きいが。さて、いけばな作家はどこを目指すべきなのだろう。自分の作品と自分の名を、何かのカタログに残したいというのか。
 いや違う。いけばなは、「いま、ここ」を大事にするしかないのではないか。どんなに綺麗に写真を撮っても、それは所詮平面的で、空間としてのいけばなはそこにはない。花の匂いもなければ、その場の温度もない。
 有名なレストランで素晴らしい料理の写真を撮っても、1年も経てば写真への興味は薄れてしまうように、素晴らしいいけばなも、写真になってしまった瞬間から、その魅力は枯れ始めるのだった。

講師紹介