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いけばな随想
diary

見ないこと 250923

2025/9/23

 たとえば、初恋が成就したと勘違いした人生最良の日を、人は毎日繰り返して生きたいだろうか。私にとっては、細部まで同じ1日がもう1日繰り返されることは、どんな佳き日が再現されるとしても地獄の1丁目である。
 目覚めてから次の眠りに至るときまで、その1日に目にした全てのものを覚えておくことはできない。はじめからほとんどのものを忘れるのが人間ならば、覚えるものも見るものも最小限に絞っておくのはどうだろう。
 または、フィルムカメラにフィルムを装着せず常にシャッターを開放しておくように、目に映ったどんな光景も網膜に焼き付けないでおけば、思い出す必要に迫られないというものだ。
 現実的な行動として、私はいけばな展に行ったとき、直感的に「パス」と感じた作品は知覚しないでただボーッと見る。目に焼き付く暇がないくらい早く、そして脳との連絡を意識的に絶って。そのかわり、「コレ」と感じた作品の前では、左からも右からも、近くからも遠くからも、下からも裏からも覗き込む。これは、いくつかを見ないことによって別の大きな時間が得られたことを意味する。

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