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いけばな随想
diary

遠雷 250831

2025/8/31

 いけばなは空間をつくる。いけばなは空間を変容させるということも言われる。だから私たちは、花をいける部屋の全体に意識を向けて、何が求められているのかを考えていける。屋外空間のときは、その空間に合わせて意識を広げる。
 子規記念博物館にいける場合は、明治時代のことや、俳句のことなども考えていける。空間の性質を考える場合、歴史の時間的な性質も考えることには大きな意味がある。空間の構成には時間も関与する。
 遠くで打ち上げ花火の音がした。夏の終わりのセレモニーだ。遠い花火もそうだが、遠雷は姿が見えず、音と振動だけが伝わってくる。どこまで意識を広げるかは人それぞれで、聞こえる音をいけばな空間に連れ込むかどうかは個々の趣味の問題だ。
 私が少年時代に通った書道教室は、縁側でカナリアが鳴き、隣室の琴の教室からは『春の海』が聞こえていた。私のいけばな教室は、たいていBGMを流しているが、時々それを止めるときは蝉が鳴いているか雨音が聞こえているか、私が心の中で懐かしい音の思い出に浸っているときである。音は、遠い記憶を呼び戻してくれる。

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