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いけばな随想
diary

花器との出会い 231129

2023/11/29

 アート作品は、鑑賞はしても使わない。一方、花器はもちろん使うためだけに買う。
 微妙なのは、陶磁器のオブジェで、「花器として使えないかなー」という期待も込めて買うのだが、たいていは作品の存在感に負けて、使うことを諦めがちになる。
 花器は、好きで買っても、花をいけようとするとうまくいかなかったり、逆に、こだわりなく買ったり、人から仕方なく譲り受けたりしたような花器は、花をいけようとすると調子よくいったりする。こじつけるようで恐縮ながら、好きなものだけ食べていると栄養が偏って成長が阻害されるから、嫌いなものも食べなさいという、栄養指導に似ていなくもない。間違いなく、嫌いなものも食べて人は大きくなる。
 花木と花器の取り合わせは、本当に意外性に満ちている。いけばなを始めた頃は、鮮やかな黄や青の花器を、誰が何を好んで使うのだろうと不審だった。主役の花を生かすためには地味な色や形の花器がふさわしく、自己主張の強い花器は邪道だと思っていた。
 しかし、花材と花器、両方ともが主役でいけばなとなる。今は、無限の取り合わせが楽しい。

好みの法則 231128

2023/11/28

 好き嫌いとか良し悪しとか、自分の感覚なのにその基準ははっきりしない。
 まあ、好きなものに対する評価は「良し」となり、嫌いなものに対しては「悪し」となる。世の中は広いので、私が好きなものを嫌いだという人が当然たくさんいらっしゃる。しんどいのは、自分が嫌いだからというので「あなたのやっていることは間違いだ」と圧力をかけてこられる場合だ。
 私は気が弱いから、相手に強い反対を表明することができない。のみならず、正面切って拒否するのも苦手で、なんとなく気まずく距離を置くような煮え切らない態度を示してしまう。
 30年以上前、友人に勧められた。「カネ出して作品を買うことを何度か繰り返すと、見るだけより何倍も目が肥えるよ」。その後、膨大な量のアート作品を見て、時に買うという経験を積んできたつもりだ。
 さて、花展に行くと、1つ2つ、好きな作品がある。場合によっては1つもないこともある。好きな作品は撮り溜めて見返すが、自分の「好みの法則」はまだ見つからない。私は相変わらず生身の作者に対しては時におべんちゃらを言う、優柔不断な奴である。

「自分たちゴト」へ 231127

2023/11/28

 仕事でも趣味でも、何でもヒトゴトにしてしまう人と、逆にジブンゴトとして抱え込んでしまう人がいる。
 私は、かつて広告デザイン業界で働いていた時、広告代理店からの間接的な仕事には気持ちが入りにくかった。何か他人事のような仕事の仕方になってしまうからだった。自分で営業して、クライアントと直接やりとりすれば、これはもう逃げ場のない自分自身の仕事として向き合える。
 40歳でいけばなと出会ったが、その後42歳、45歳で急性心筋梗塞で手術を受け、2度目の手術後に退職した。振り返ってみれば、何でもかんでも自分事として抱え込んだやり方が仇となったと思う。
 その後、転職してからも、支部役員をさせていただきながらいけばなを趣味として続けてきた。しかし、支部活動も自分の作品制作も、どこか他人事の気分が抜けていなかった。今年度、退職のタイミングで支部長になった。他人事ではいけないと思った。
 かといって、かつてのように抱え込んでしまうような自分事にしてはいけない。すこーし抜きながら、自分と仲間の「自分たちゴト」で取り組むことが肝心だと思っている。

花の世界 231126

2023/11/28

「同業他社」という表現がある。近年は、経営の多角化とか企業のグループ化があるし、どこからどこまでを同業とすればいいのか分かりにくい。
 昨日、草月会愛媛県支部の研究会を開催した。その講師に、フラワーデザイン業界で、素敵に仕事をされている髙智美乃氏(ドイツ国家認定フローリストマイスター)をお招きした。あとで、いけばなとは無縁の方から、「華道の集まりがフラワーデザインの方に教えを乞うようなことを、よくぞ実行できましたね」と言われた。
 だいたい、似ているけれど違うという関係で、よく喧嘩は起こる。全く異業種であれば、互いに程良く受け入れたり程良く無視できるのに、似通った業界の相手だと、不幸にも対立したり牽制し合ったりの関係になりがちだ。
 私は、花を扱うということが共通しているなら、生産者に始まって流通に携わる方々や、地域の道路の街路樹や花壇を世話している方々まで、みんな仲間だと思っているので、そこに境界線を引きたくない。
 柔道や空手道は、剣道や弓道に比べて国際化が進んでいるように見える。華道の世界はどうなっていくだろうか?

花とカクテル 231125

2023/11/26

 バーで話していて、「いけばなに何種類の花材を使うか」が話題となった。私は、2種類で完成させたいと言った。
 飲んでいたカクテルは、マスターが大会で受賞したレシピで、4種類の飲料とレモンの、都合5種類が材料だ。「普段は何種類でカクテルをつくることが多いの?」と聞くと、マスターは「3~4種類の材料ででつくることが多いでしょうか。コンテストで入賞するためのカクテルは、また取り組み方が違うと思っています」。
 普段のカクテルが3種、大会のカクテルが5種。これをいけばなに置き換えると、普段のお稽古が2種、花展の場合は4種ぐらいのところだろうか。
 花展を開催する会場は、たいてい集客が見込める商業または観光施設だ。その時点で、侘び寂びを感じさせるような出品は、賭けである。豪華であれば何とか「綺麗ね」と見てもらえるのだが、少ない花材で“かそけく”出品すると、「貧相だ」とか言われるのがオチだ。
 話し相手の若い彼は、できれば1種1本のいけばなをしたいと言う。気合負けした私は、せめて恰好つけて、シングルモルト・ウイスキーをストレートで飲む。

講師の事